ノートパソコンであるThinkPad535でもCD-Rが使えることを実証しようという企画である。 |
序章 メインで使用しているThinkPad535には、PCカードのSCSIインターフェース経由で様々なストレージデバイスをつないでいる。CD-ROM・PD・MO(MOは事実上使っていないが…)と揃っているので、予定では次の増設は大容量デバイスであるDVD-RAMになるつもりだった。そのためにPDを買ってたんだし(Panasonicというか松下寿を信用してね)。 ところが、世間ではいきなりCD-Rが大ブレーク!それに合わせてドライブもメディアも価格が急激に下がってきたのだ。ちょっと迷っていたがここはやはり導入を検討するしかあるまいっ…てなわけで、本気でCD-Rの導入を検討しだした。 第1章 インターフェースの検討 さて、CD-Rを導入するにあたっては、接続するインターフェースを選択しなければならない。ひとつはSCSIでもう一つがATAPI(E-IDE)である。 ※注 ここでは扱っていないが、USB接続のCD-Rが存在する。これについては情報がないので何も書けないが、USBならノートだろうがデスクトップだろうが普通に動作するだろう。でも、価格が高いのが難点か。(1999.06.27)タワー筐体のデスクトップ機ならば、インターフェースの空き具合でどちらか自由に選ぶことができる。まぁ、普通ならE-IDEがひとつぐらいは空いてるだろうから、そこにつなぐのがもっともコストをかけずに導入できるだろう。最近のマザーならIDEバスマスタ転送をサポートしているはずなので、転送速度・CPU負荷の点でも問題ないはずである。私ならPD・CD-ROM・CD-RのマルチCD-Rを使いたいなぁ。もしSCSIコネクタをオンボードで搭載、あるいはPCI SCSIボードを積んでいるならSCSI増設でもいいだろう。こっちのほうがより安定して書き込みができる可能性がある。基本的にはSCSIの方がCPU負荷は少ないはずだから(一概には言えないけどね)。 これがノートPCの場合はどうなるだろうか?外部ストレージデバイスを増設できる本体標準装備のポートというのは、パラレルポートぐらいである。しかし、このポートでは転送速度が遅いし、割り込み・CPU負荷を考えると安定したCD-R書き込みには適さないだろう。とすれば、やはりPCカードスロットを利用して、SCSIあるいはATAPI接続を検討することになる。 ※注 1998年12月現在、パラレルポート接続のCD-Rというのも発売されている。その前に、実はもうひとつ手段を考えていたのだ。内蔵HDDを接続しているE-IDEコネクタである。ThinkPad535の内蔵E-IDEコネクタはバスマスタ転送をサポートしているので、ここにHDDをマスタ、CD-Rをスレーブとしてつなぐことによって、CD-R焼き用の環境を構築すると同時に、ローコストにCD-Rを導入しようとしたのである。しかし、これはデバイスのスレーブ接続実験までは成功したものの、バスマスタ転送時のトラブルが解決できなかった(「IDEコネクタの拡張」参照)ため、ポシャったのである。 第2章 ノートPCに適したインターフェースは? さて前章で触れたとおり、通常のノートPCであれば、インターフェースはPCカード経由のATAPIもしくはSCSIを考慮することになる。 さて、もっとも安定した書き込みを実現できると思われるのが、CardBus対応のSCSIカードである。これは、従来のPCカードが16bitしかデータバスがなく、しかもDMAの信号ラインがなくDMA転送ができないため、転送速度の上限が低かったのに対して、PCIバスと同じく32bitデータバスを用意し高速なデータ転送を可能にしたPCカードの規格である。これを使えば、一部のPCI接続のSCSIカード必須と表示してあるCD-Rドライブでもほぼ問題なく使用できると思われる。もし、あなたがCardBus対応のノートPCでCD-Rを使おうと考えているなら、CardBus対応のSCSIカードを使用することをおすすめしたい。 さて、我がThinkPad535だが残念ながらCardBusなどという洒落たものには対応していない。なにしろスペックとしてはごくごくノーマルなPCなので。 とすると、残るは従来のPCカードを使う方法となる。SCSIカードであれば現在のものはたいていSCSI-2規格のものであると思うので、理論値で10MB/sの転送速度が、実際には2MB/s程度の転送速度が実現できる(実測で1MB/s)。この速度制限はPCMCIAコントローラーの処理速度の限界と考えてもらっていいので、SCSI規格自体には十分余裕があることになる。単純に考えれば、2倍速書き込みなら300KB/sの転送速度があればいいのでこれで問題はないだろうし、SCSIコマンドのオーバーヘッドを考慮に入れても十分だろう。しかも、最近はアイ・オー・データからUltraSMIT転送のSCSIカードが出ているので、これを利用すればかなり書き込みの負荷も軽減されると思われる。ただし、ミニポートドライバの作り方によってはCPU負荷が重くなってしまうことがあるので、信頼できるメーカーのものを使うことが望ましい。とはいっても、PCカードを作ることのできる技術を持ってる会社は少ないので、そうそうはずれはないですが(^^;) 一方ATAPIカードにおいても、PCMCIAコントローラーの転送速度が実効速度の上限となるので、SCSIカードと転送能力はほぼ一緒と思われる。しかし、インターフェースが簡単でコマンドオーバーヘッドが少ない分、SCSIよりも実効転送速度が上がる可能性がある。PCMCIAコントローラーの処理速度内では、余分なコマンド処理を必要としない分、転送できるデータ量が増えることになるからだ。 ただし、ATAPIではSCSIよりもCPUが転送に果たす役割が大きくなるので、CPU負荷が高くなり、他の動作が重なったときに書き込み処理が不安定になる可能性が考えられる。また、拡張性がないためATAPIカードは事実上使い回しができない可能性が高い。ATAPIカードの値段までCD-R導入に直接かかる必要となってしまうのである。 逆に言えば、専用の環境を構築できるので、不安定要素をなくすことで安定性を追求することが可能ってことで、これは大きなメリットなんだけどね。 第3章 メーカーセットの検討 実際に導入するドライブを決めるにあたって、メーカーではどのようなドライブを使用してセットを組んでいるのか調べてみた。ここでは、有名メーカー3社のPCカード&ドライブセットを取り上げることにする。 |
メルコ | Logitec | I・O・DATA | |
製品名称 | CD-R28N | LCW-7206/PS | CDR-TX412/CBSC |
価格 | \49,500 | \49,800 | \72,000 |
インターフェース | ATAPI | SCSI-2 | SCSI-2 |
ドライブ | SONY CDU928E |
SONY CDU926S |
TEAC CD-R55S |
速度 | Read×8,Write×2 | Read×6,Write×2 | Read×12,Write×4 |
バッファメモリ | 512KB | 512KB | 1024KB |
ローディング方式 | キャディ | キャディ | トレイ |
書き込み方式 | Track at once | Track at once Packet Write |
Disc at once Track at once Packet Write |
付属書き込みソフト | B's Recorder GOLD | WinCDR4.0 | EASY CD CREATOR Ver3.5 |
推奨環境 | Pentium 133MHz MEMORY 32MB HDD 650MB |
Pentium 133MHz HDD 700MB |
Pentium 100MHz |
備考 | LCW-PD648/PI(\68,000)は Duo ATAPIカード付属の PD兼用マルチドライブ仕様 |
Card Bus対応 Duo PCカード添付 |
上記の表は簡単に比較できるようにスペックを並べてみたものだが、それぞれ組み方が違っていて面白い。 まずメルコ・ロジテックはソニーの旧型ドライブを使用することによってコストを下げている。ただし、一方はATAPIでもう一方はSCSIなのだが。ドライブ自体のスペックはほぼ同じなので、価格も似たものとなっている。 それに対してアイ・オー・データのものは発売されたばかりということもあり、性能が比較的いいドライブを採用しPCカードもCardBusとPCMCIA両対応という高級な仕様となっている。 こうなると、選択の仕方としてはまずどこまで機能を求めるかということが第一である。Disc at onceの書き込みが必要とか、読み書き速度が速くないとダメとか、バッファが多くないと不安とかいうことであれば、アイ・オー・データのものを選ぶことになる。ただし、お値段もかなりいい数字となっているけど(^^;) それに対して、最低限書き込めればよい!という向きにはメルコ・ロジテックのものでも十分だろう。PCカードがついてこの値段なら結構リーズナブルだと思うしね。 第二のポイントは付属している書き込みソフトだ。その点ではアイ・オー・データのものはちょっと…という感じを受けてしまう。Adaptec社の製品で機能もいいんだけど、ちょっと使いこなしが難しいかなと感じる。WinCDRとB's Recorderは各社が添付していてユーザーが多いため、動作上の問題点もつかみやすいし何かと楽ではないかな? 第4章 実際に導入するのは… 続いて、実際に導入する機種を考えてみる。 まずは前章であげた中から。メルコのものは、ATAPI接続なので安定性に疑問がある(実績が少ない)ことから却下。アイ・オー・データものはキャッシュが1MBあったりとドライブの性能はいいのだが、価格と添付ソフトで却下。結果として書き込みソフト・インターフェース・価格のバランスが取れているロジテックのものを採用とする。弱点はDisc at onceでの書き込みができないこと。これはドライブがサポートしていない(ソフトウェアの問題ではない)のでしょうがないのだが… ここまでは、ノート用のセットについて考えてきたが、実のところ私はすでにSCSI-2のPCカードを持っているのである。かなり前の製品で性能が劣るとはいえ、もう1枚PCカードを買うのはもったいない。そんな金があるならその分CD−R本体につぎ込んで性能の良いドライブを買った方がいいとも思うのである。 現実に、ノート用セットと外付ドライブ(バルクじゃないよ)の差はそれほど大きくないので、両にらみで検討する必要がある。ただ、コストだけを優先するならメルコとロジテックのノート用セットの方が間違いなく安いので、そっちを購入することになる。PCカードがついていながら外付ドライブより安いっていうのがすごいのだが、古いドライブを使用しているからこそできることであろう。 それでは外付ドライブについて検討してみよう。今回の導入にあたっては、読み書きの速度についてはあまり注意を払っていない。だいたい不安定になる要素が増えることを考えれば、CardBus非対応のノートPCで4倍速書き込みなんて必要ないのである。それよりも2倍速で安定して書き込める方がよほど重要と言えよう。 そのため、ドライブが満たすべき仕様は 2倍速書き込みサポート 1MB以上の大容量バッファ採用 SCSI-2インターフェース Track at onceサポート とする。また、ISAバスあるいはPCカードでの動作実績があることも目安とする。 添付ソフトはWinCDR4.0かB's Recorder GOLDであることとし、パケットライト用ソフトも添付していることが必要である。 さてさて、以上のような条件に該当するドライブが果たして購入できるのか?外付になるのかノート用セットになるのか?それは導入機種決定までのお楽しみなのである(笑) 第5章 導入機種の決定 前章で書いた候補の中から選んだのは…どれでもなかった(爆) まずは、ノート用セットの中では書いたとおりLogitecのLCW-7206/PSに目を付けていたのだが、これに対抗するものが現れたのだ。それは、同じLogitecのLCW-748Sだ。 これはSONYのCDU-948Sを採用した外付SCSIのもので、スペックは8倍速読み込み・4倍速書き込み、2MBバッファ、Disc at onceサポート、CD-TEXTサポートとまさに至れり尽くせり(笑)。しかも添付ソフトはWinCDR4.0なのだ。 これで価格差は約2,000円高いだけというのだから、もう決まったようなもの。あっさりとLCW-748Sを買ってしまった。一体これまで書いてきたのはなんだったんだろう…(^^;) ポイントはDisc at onceのサポートである。買ってみて初めてわかったのだが、オーディオCDをコピーする時はDisc at onceで書き込まないと全く同じにはならないのだ。Track at onceで書き込むと、トラック間の秒数がマスタと同じにならないことがあるらしい。ということで、完コピを目指す人はDisc at onceをサポートしたドライブを買うように! ちなみに、LCW-748Sのスペック一覧表を第3章に掲載したのと同様な形で載せておくので参考にしてほしい。 |
Logitec | |
製品名称 | LCW-948S |
価格 | \??,??? |
インターフェース | SCSI-2 |
ドライブ | SONY CDU948S |
速度 | Read×8,Write×4 |
バッファメモリ | 2048KB |
ローディング方式 | キャディ |
書き込み方式 | Disc at once Track at once Packet Write |
付属書き込みソフト | WinCDR4.0 CD-R FS |
推奨環境 | Pentium 133MHz MEMORY 32MB HDD 650MB |
備考 | らくちんCDラベルメーカーLight添付 |
第6章 動作状況
LCW-748Sの動作状況だが、ThinkPad535+SCSI-2カードの環境で、データ・オーディオ共に4倍速書き込みが実現できている。ただし、オン・ザ・フライでは焼けていない。読み込みのための高速ドライブが用意できないのだ。12倍速のCD-ROMドライブがあるが、WinCDRでは読み込み速度が設定できなかったためチャレンジしていない。 なお、LCW-748SはノートPCでの動作については自社製PCカード(CardBus?)との組み合わせでしか動作保証をしていないので気をつけてくれ。 あと、まれに書き込み時に転送が間に合わないことがあるのだが、発生頻度や条件などはまだわかっていない。ただ、それほど深刻な事態にはなっていないので、気にする必要はないと思われる。 ということで、予想どおり単なるSCSIカードでもCD-Rを使うことはできたわけで、とりあえずよかったよかった…。 第7章 書き込み環境 CD-Rの書き込みを行うには、なるべく安定した環境が必要である。すなわち、不要な割り込みがかからない、他のタスクがないなど、システムがCD-R書き込みに専念できるような状況にしてあげなければならない。しかし、Windowsの場合にはOS自身が裏タスクでスワップファイルへのアクセスを行うとか、タスクスケジューラ(システムエージェント)が勝手に起動してしまうとか、スクリーンセーバーが動作するなどのことが起こりうる。したがって、このような状況にならないようにあらゆる常駐ソフトは終了させ、OSの設定も変更してあげる必要がある。仮に、かなり高速なシステムであっても、書き込み中にメーラーがメールサーバにアクセスしたりすると、バッファアンダーランが発生する確率は格段に跳ね上がることになる。 しかし、理想的な環境を作るのは以外に難しい。Windows98であればmsconfigを使ってデバイスドライバやスタートアップで起動させるソフトの組み込みを止めることが可能である。しかし、いちいちそれを指定するのは面倒くさいものだ。さらにWindows95だともっと難しい。config.sysとautoexec.bat、win.iniなどを個別に書き換えるといったことをしないとならないのだ。さらに、スワップファイルの制限などといったら簡単に変更するのは大変だ! そこで、非常に便利なツールを紹介しておこう。完全なるCD-R環境への道というWebページで公開されている竹内 正生さん作製のCD-R All Writeである。これはCD-Rを焼くための環境を自動的に最適化して再起動してくれるのだ。これさえあれば面倒な環境書き換えの必要はなく、まさに便利としかいいようがない。 かなりの数の人がこのソフトを使って実績をあげているようなので問題なく使えるはずだ。もし、書き込みが安定しないという人はこのソフトを使ってみることをおすすめする。 ※このページからダウンロードできるのはVisual Basic 5 ランタイムライブラリ無しのアーカイブファイルです。Windows95以下で使用する場合はランタイムライブラリが必要になりますので、上記のWebページへ行ってダウンロードしてください。 第8章 追加情報 1 メディアの相性 私が通常使用しているメディアは、maxellのCD-R74XLである。まだマイナーチェンジ後の8倍速対応メディアは使用していないが、以前の6倍速対応メディアではオーディオCDを含めて4倍速での書き込みが実現できている。比較的安価なのでもっぱらこれを使用している。 実は、今回安さにつられてONKYOのメディアを買ってみた。表示上は4倍速対応メディアとなっているのだが、オーディオCDの4倍速書き込みでは音飛びが発生した。噂では聞いていたが、やはり信頼性には欠けるようだ。今後は、データのみを低速書き込みで使用しようと考えている。安さだけでメディアを選ぶとろくなことがないってことを証明してしまった… なお、最も使用に適したメディアは太陽誘電製のもの(that's)である。これに対応していないドライブはないといっても過言ではないだろう。最も信頼性を必要とするものはこのメディアを使うように!将来データが読めなくなると困るからね。 オーディオCDを作る場合には三井化学のメディアがいいという噂が… |