□□□ プロローグ □□□(承前) 松平は、更に全体を包み込むようにしながら、大きな手で純子の乳房を揉みし だいた。そのタッチは、語り口と同様あくまでソフトに…。 * * * * * 初めは、本当にただの「反省会」だった。 入社3年目という異例の早さで、(局としては)深夜帯とはいえ全国ニュース のスポーツコーナー担当に抜擢された純子にとって、まさに毎日が勉強に等しい 放送となっていた。 当然納得のいく出来など数えるほどもなく、失敗のない日が珍しい、そんな毎 日を送っていたのだが、そんな日々の支えとなってくれたのがメインキャスター を務める松平定知であった。 さすがに「ミスターNHK」として出世街道を順調に進んできただけのことは ある。一種の「職人芸」とも言うべき見事なアナウンスに、純子はレベルの差を 感じる以前に聞き惚れてしまい、それが元でトチってしまうことも度々あった。 そんな松平が純子に声をかけてきたのは、最初の金曜日を終えた時だった。 「久保君、もし時間が許すようなら、この後簡単に反省会でもしたいんだけど」 予期していなかった松平の提案に、純子は一瞬戸惑ったものの、 「はい。願ってもないことです。いろいろと教えていただきたいと思っていまし たので」 と答えた。すると、松平は軽く微笑んで、 「それは丁度よかった。ところで、久保君はこっちはイケるクチかい?」 と、親指と人差し指で輪を作り口元に持っていきながら訊いてきた。 「えっ…、あぁ、お酒ですか? そんなに飲めませんけれど、大丈夫です。でも それが何か?」 「いや、反省会といってもね、スタッフと一緒に会議室で難しい顔をしながら時 間を潰そうなんていうのとは違うんだよ。僕と久保君とで、どこかの店に入っ て雑談でもしながら1週間を振り返ろうと思ってるんだ。それとも、そういう のは苦手?」 つまりは、それを口実に若い女の子と飲みたいだけなのかしら…。そう思わな いでもなかったが、イギリスやアメリカへの留学経験もありフランクな付き合い というものに慣れている純子にとっては、それほど苦手なことでもなかった。 それに、まさか取って食われちゃうって訳でもないしね…。思わずクスッと笑 いそうになるのを堪えながら、純子は、 「いえいえ、そんなことありません。松平さんとツーショットなんて言ったら、 私の母なんか羨ましがるに決まってます。自慢できますよ」 とにこやかに答えた。その返事を聞いて、松平はほっとしたように、 「いや、そんなつもりじゃないんだけど。久保君も言うねぇ、まいったなぁ…」 と頭を掻いた。 * * * * * 「んっ…」 首筋を這う松平の舌先にも、純子は直ちに反応した。最初はくすぐったいとし か感じられなかったこうした『攻撃』だけでも、今の純子には十分なエクスタシ ーを与えるようになっていたのだ。 「定知さ…んっ、あんっ、疲れてたんじゃ…あ…りませんか?」 快楽の狭間から、ようやく絞り出すように訊く純子に、松平は、 「こんなに可愛らしいお嬢様が隣にいるというのに、疲れたなんて言ってられる 男はいないよ」 と答えた。そして、片方の手は乳房を包み込んだまま、もう片方の手が純子の下 腹部へと降りていった。 「ああっ…!」 茂みをかき分け、その指先が純子の一番敏感な部分に触れる。愛らしい、真珠 のようなそれは、再び溢れ出した蜜によって淫靡に光り輝いていた。 「久保君こそ、疲れてないの?」 この状況での質問は酷とも言えたが、純子は、 「わ、私はっ…、んふっ…、だ、大丈…夫、です…」 と、頭の上でシーツをきつく握りしめながら、何とか答えることに成功した。し かしそれからは、止まることを知らない松平の攻勢に、もはや言葉として体裁を なしていない嗚咽しか出てこない。 「あぁぁん…」 歯を食いしばるように、快感の波に耐える純子の表情を見ながら、松平は、 「やれやれ、久保君も相当に淫乱だねぇ」 と、わざと蔑むような口調で呟いた。 「そ、そ…んな…、さ、だ知さん、酷い…。ああっ…!」 「まさかこんなだとは、さすがに僕にも分からなかったねぇ」 いきなりの口撃に、純子は、 「ひ、酷い…。あぁぁぁぁんっ、んっ…!」 と半ば涙ぐむかのように、言葉にならない言葉で訴えた。 「周りの連中も、久保君がこんな女だと知ったら、心底驚くだろうねぇ。それと も、うすうす感づいてるヤツもいるのかな?」 松平は、普段の彼からは想像もできないような冷めた口調で続けた。 「それに、なんだか余計に濡れてきたようじゃない。そう言われて、久保君、本 当は嬉しいんじゃないの?」 嗤うように言う松平であったが、事実純子のそこは、止めどもなく溢れてくる 蜜でビショビショになっていた。 「そん…な…」 そんな松平の意外とも言える蔑みの言葉を聞きながら、しかし純子は、物理的 なものとは違う快楽を感じ始めていた。 『本当に、溢れてるみたい…。私は定知さんの言うように、いやらしい女なのか しら…。』 そう思うと、身体の芯がカーッと熱くなるように感じられた。興奮状態の身体 は既に熱く火照っていたが、それがなかったとしても間違いなく純子は真っ赤に なっていただろう。 『私は、淫乱…』 心の中でそう呟くと、不思議に松平の感触がより敏感に感じられてきた。 <続く> |