PC-98シリーズにおいてサポートされるWindowsは、Windows2000が最新版となっている。幸いにして、このWindows2000のNEC
PC-98対応版は、NTカーネルが動いているという性格上PC/AT系の扱いを色濃く残したままPC-98対応化されており、PC-98固有機能部分以外はPC/AT用デバイスドライバで動く周辺機器が多い。このことを利用して、PC-98対応を謳っていないPC/AT用ビデオカードを無理矢理PC-9821上で動かしてしまうということが行われてきた。 そこで、手持ちのPCIビデオカードをかき集めて(一部新規調達あり)、PC-9821Xv20/W30で使えるビデオカードを選定し、あわよくば乗り換えてしまおうということを考えたわけだ。 なお、判定に当たってはベンチマークとしてHDBENCHを使用し、その他に、メディアプレーヤーでMPEGファイルを再生しコマ落ちの具合を目視で確認することを行った。また、3DMark2000が動作する場合には、そのスコアも掲載する。 ※1 今回の検証に当たっては、以下のWebページを基礎資料として参考にしている。というか、ここで動かないとされたボードについては、基本的に検証候補から外している。 |
1 GA-VDB16/PCI(アイ・オー・データ)→製品情報 |
現在、PC-9821Xv20/W30で常用しているビデオカード。PC-98に正式に対応しており、メーカーからPC-9821用ドライバが配布されている。Voodoo
Bansheeを搭載しており、一時期はPC-98最速のビデオカードとも呼ばれた。ただし、その高いベンチマークスコアは、ドライバに細工がなされているからだとの話もあった。また、発熱の多さと空冷ファンの弱さも有名で、夏場には昇天してしまうボードも出たという。 今回の実験においては、常用カードということでこのGA-VDB16をリファレンスとして進めていくこととする。とりあえず、HDBENCHのデータは以下のとおり。 ★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★本ボードの評価については、ベンチマークのスコアは別にしても、古いチップにしてはPC-98正式対応ボードとして確かに速い部類に入ると思う。ただし、MPEGファイルの再生ではコマ落ちが明らかにわかる程度には遅く、そして何より画質がよくないというのは明らか。 なお、3DMark2000は完走しており、スコアは989であった。機能的にサポートされていないテストも含まれているため全体のスコアは低いものの、いろいろ試しても安定して動作していることから、放熱に関しての改善と画質対策を行うという条件付きではあるが、おすすめのボードだと思う。 |
2 GA-SV408/PCI(アイ・オー・データ)→製品情報 |
次は、PC-98シリーズに正式に対応しているアイ・オー・データ製ビデオカード「GA-SV408/PCI」である。S3のSavage4
PRO+を搭載しているが、写真の基板を見てもわかるとおり「GA-SV432/PCI」の廉価版としての位置づけとなっている。S3TCや動き補償機能などを備えたチップの能力はいかほどのものか、早速ベンチマークデータを見てみよう。★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★全体としては、GA-VDB16よりちょっと劣るといったところだが、ほぼ同レベルと見てよさそう。ただ、画質は明らかにGA-VDB16を上回っており、画質優先なら絶対こちらだろう。とは言っても、GA-VDB16との相対的な比較なので、画質が最高というわけではない。 3DMark2000はドライバエラーが発生してシステムダウンするため、測定不能。3D方面の利用は避けた方が無難なのかも。 MPEGファイルの再生では、細かいコマ落ちは少ないが、ディスクアクセスなどシステム全体の負荷が上がった時に大きくコマ落ちが発生しているようだ。このため、コマ落ちの間隔は長く感じる。ピーク時のシステム負荷を下げれば、改善できる可能性があるかも。 今更、PC-98で3Dをやろうとか考える人もいないと思うので、ブラウザやメーラーといったインターネット端末的な使い方をするのであれば、GA-VDB16よりもこちらがいいだろう。 |
3 Viper V330(DIAMOND MULTIMEDIA) |
いよいよ、PC/AT用ビデオカードの登場である。まずは、RIVA128を搭載したDIAMOND
MULTIMEDIAのViper V330(4MB版)である。これについては何やら動作報告があるようなので、期待大である。 PCIスロットに搭載して起動すると、特に障害もなくDOSが立ち上がった。PCIセットアップユーティリティで見てみるとちゃんとリソースの割り当てはできているようなので、ハードウェア的には動作していると言っていいだろう。 いよいよWindows2000を起動してみると、プラグ&プレイでボードを認識してドライバのインストール画面に入ったが、標準でドライバがないためにドライバのありかを訊いてきた。WebからダウンロードしてきたNT用ドライバをインストールしてみたが、インストールは正常に終了するものの、再起動後にはドライバがうまく機能していないようでボードの動作は確認できなかった。 ハードウェアとしては正常に動いていると思われるので、あとはドライバの問題だけであろう。Windowsのセットアップ自体を変更するとか、PC/AT用Windows2000からドライバを持ってくるなどすれば動く可能性はあるが、今回はそこまでやらないで諦めることにする。 なお、これとは別にノーブランドのRIVA128ZX搭載カード(4MB版)が手に入ったので、同じように試してみた。こちらは、リソースの割り当てすらされないため、Windowsからも認識されない。ボード上のチップやパーツの配置はViper V330とそっくりなので、nVidiaのリファレンスデザインに基づいて作っていると思うのだが、BIOS等は違うらしい。 |
4 GFMX4000-P128C(玄人志向)→製品情報 |
そろそろ、現行製品でチャレンジしてみようと思う。次なるビデオカードは、nVidiaのGeForce
MX4000を積んだ玄人志向のGFMX4000-P128Cである。しかし、このチップはGeForce4MXなのかGeForceMXなのかよくわからないですな。nVidiaの公式サイトを見てもわからないというのもどうかと思うのだけど。 さて、このカードを搭載して起動すると、メモリチェック後に画面表示が乱れてストップする。これは、ビデオカードのBIOSが動作する時に、PC/AT系のBIOS及びシステム環境を前提にして動いてしまうために発生する現象である。普通にここをスルーしてしまうViper V330のようなケースは特殊ということで。 今回は、この障害をクリアするのにハードウェア的に対応することにした。BIOSが障害になるのであればそれを取り除いてやれば済むわけで、BIOS ROMを物理的に取り外してしまうことにした。 ボード上にはROMが載ると思われるパターンがあるわけだが、このカードではそこにPMCの25LV512という8pinのチップが載っている。データシートを探してみたが見当たらなかったので確実とは言えないが、そのピン数からしてシリアルEEPROMというあたりだろう。これを除去してしまえばBIOSが動作することはなくなるので、問題は一つなくなるはずである。 ↓↓↓↓↓↓↓↓ さて、ROMを外したカードを搭載して起動してみると、予想どおり起動時の障害は解消した。で、PCIセットアップユーティリティでリソースの割り当てを確認してみると、リソースは割り当てられていないみたい。当然、この状態でWindows2000を起動してもプラグ&プレイでボードが認識されることはなかった。 ということで、ハードウェア的にROMを殺す方法はまずいということが確認できた(おぃ)。なにもこんな実験に新品のビデオカードを投入する必要もないと思うのだが、やってしまったものはしょうがない。しかも、ROMを取り外す時にピンを1本折ってしまった(根元から…)ため、復旧もできず。今回の実験中で最も大きな損失となった。 |
5 GeForce2MX400(ノーブランド) |
さて、いよいよ今回の実験における本命の登場である。過去の動作事例を見てもGeForce2MXでのものが多く、一番手間もかからなさそうである。 基板にはNV11というGPUの開発コードとMX-400という文字が見えることから、GeForce2MX400のカードだとわかるが、裏面にはなぜかRADEON搭載カードのシールが。出荷時からこれなのか、それともその後に他のものが貼り付いてしまったものなのかは不明。 早速、このボードを搭載して電源ON!GeForceMX4000のようなこともなくメモリチェックの後も正常に起動する。リソースも正常に割り振られているようである。そのままWindows2000を起動すると、プラグ&プレイでカードを認識した。ドライバは、nVidiaの公式サイトからダウンロードしたものをインストールしてみたところ、問題なくインストールが完了した。 ベンチマークを動かしてみると、HDBENCHは正常に終了するものの、3DMark2000を動かすとドライバエラーを吐いて止まってしまう。 この症状については、DirectXのバージョンやドライバのバージョンを組み合わせて実験してみたが、ForceWareの56.72以降を使用すると発症するらしいことがわかった。確認できた問題点としてはこれだけか。 ★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★さすがにVoodoo BansheeやSavage4とは実力差が出ている。3DMark2000のスコアは2036となり、3D方面の能力は段違いである。MPEGファイルの再生でもコマ落ちの発生状況が異なり、ちょっと引っかかりを感じる程度になった。ちょうど、K6-2マシンでDVDを再生した時に近い感じである。 |
6 結論 ある意味、最初から決まっていたような結論ではあるのだが、その能力と作業の簡便さからGeForce2MXを使用すべきということになった。 ForceWareの最新版では動かないという点はあるものの、DirectX8.1やDirectX9.0をインストールした環境においても基本的な動作に支障がないというのは大きいだろう。たぶん日常使用には問題ないだろうし、古い3Dアプリケーションなら何とか動作する程度には持ち込めると思われる。 何よりも、PC/AT用ビデオカードを導入するということについての苦労があまりないというのが一番なんだけど。 |
7 さらなる調査の実施 さて、当初予定していた実験については6までの項目で終わるはずであった。そして、常用ビデオ カードをGeForce2MX400に変更し、その設定を煮詰めていく予定だった。 しかし、手元にはまだ試していない、しかも比較的新しめのPCIビデオカードがいくつか残っていて、なんとなくこのまま終わらせるのも消化不良な感じがしたことから、新たなビデオカードを投入し実験を継続することに した。 なお、これ以降は比較的新しいビデオカードを使用することもあって、環境の一部が以下のとおり変更となっている。 ・DirectXは9.0c(2005年12月版)を使用まずはDirectX9をインストールすることにした。これは、新しいビデオカードに使用するドライバはDirectX9の使用が前提となっている、あるいは最適化されていることから、DirectX9を共通条件として設定せざるを得ないということにある。 さらに、DirectX9環境下でのベンチマークソフトとして、ゆめりあベンチに変更することにした。これは、DirectX7世代である3DMark2000のスコアでは、性能比較として不足する面があると判断したためである。なお、必要に応じて3DMark2000のスコアも掲載する。 次に、実使用環境での動作状況を確認する必要があるため、サウンド・SCSI・USB2.0の複合ボードである玄人志向製CHANPON3を使用する。このボードを使用しただけで負荷が増えるためベンチマークのスコアがものすごく悪化するのだが、その状況下においてちゃんと動作してくれないと無意味なので、このボードの使用も前提とする。 ちなみに、CHANPON3を使用しただけでどれだけスコアが変化するか、その変化後のHDBENCHのデータを示してみたいと思う。 ★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★5で掲載したデータと見比べてもらうとわかるのだが、メモリのRead・Writeのスコアが落ちており、これに伴ってHDDの転送レートも下がっている。3DMark2000の値も2036→1698と下がっており、CHANPON3が足を引っ張っている状況がわかると思う。 正直なところ、ベンチマークの数字上だけなら、高速化するための最大の方法は「CHANPON3を使わない」ということなのだが、それでは意味がないのでこの案は却下ということで。 その上で、この環境で安定して動作する範囲内においてFSBのクロックアップを行っている。FSBを72.5MHzまで上げると、ビデオカードの表示においてテクスチャの欠落が生じることが確認できるので、FSBは70MHzとしている。 そして最後に、GeForce2MX400以外のビデオカードは、メモリチェック直後にハングアップするものがほとんどなので、これを回避しなければならないことは4で書いたとおり。 そこで、これ以降はまりも氏が提供してくれているNOATBOOTソフトウェアを使用してソフトウェア的に回避する手段をとることにする。今回は、UIDE-98を使用していることから、このROMにパッチを当てる方法を採用。いやぁ、最初からこれを使っていたらGFMX4000-P128Cをつぶさなくても済んだんだけどねぇ… 当然のことながら、このような方法はメーカーの保証対象外の行為のため、完全なる自己責任の下で行うこと! |
8 GeForce2MX400(ノーブランド) |
それでは、新しい環境におけるベンチマークデータを測ってみる。これが、今後のリファレンスになるということで。★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★そして、この環境におけるゆめりあベンチのスコアは618である。当然、640×480の最低ランクの描画品質においての数字である。 |
9 RD925-P256C(玄人志向)→製品情報 |
ここで、初めてATI製GPUのRADEON9250を搭載したビデオカードの登場である。知る限りにおいて、ATI製GPUを採用したPCIビデオカードとしてはRADEON9250を越えるクラスのものを採用したものはないので、最新ビデオカードと言っても差し支えないかもしれない。 さて、このボードを載せて起動してみる。メモリチェック後の挙動については回避パッチ適用により正常に動作しているため、DOSの起動までは問題ない。PCIセットアップユーティリティで確認してみると、正常にリソースが割り振られているようである。 ただしRADEONの場合、デュアル出力のためにハードウェア的に2個のデバイスが載っているように扱っているため、リソースも2つ割り振られている。複合ボードのような扱いと思えばいいのか? Windows2000を起動してみると、プラグ&プレイによりボードが認識される。その後Catalystをインストールして再起動してみると、ここでハングアップ。どうやらドライバが立ち上がるところで止まってしまうらしい。VGAモードで起動してドライバを入れ直してみても症状は改善しなかった。 やはり、複合デバイス扱いというあたりがネックになっているのかもしれないが、このボードについてはここで断念。 |
10 GF6200A-LP128H(玄人志向)→製品情報 |
これぞまさに最新のPCIビデオカード、nVidiaのGeForce6200Aを搭載したカードである。製造元はSPARKLEで玄人志向が販売している。DirectX9.0のShader
Model 3.0に対応しCineFX 3.0エンジンを搭載するという、現時点では最強のPCIビデオカードでもある。ただし、メモリ容量が128MBであり64bitインターフェースである、クロックが低いなど、弱点も多いため最速ではないという点が微妙かも。 しかし、メーカー公式によれば要求されるインターフェースはPCI rev.2.1ということなので、比較的広範囲に動作する可能性の高いボードである。 なお、搭載チップのGeForce6200Aであるが、これはAGP8Xインターフェースを備えたチップであり、PCIインターフェースは有していない。そこで、このビデオカードではAGPインターフェースの信号レベルをPCIインターフェースの信号レベルに変換することにより動作可能にするという、かなり強引な仕組みを導入している。 さて、購入したばかりのこのカードを搭載して起動。リソースの割り振りも正常なようなので、Windows2000を起動してForceWareをインストール。無事に導入が完了した。で、HDBENCHの値は以下のとおり。 ★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★思ったより遅いというのが正直なところか。やはりメモリ周りが弱点なのかも。動作条件としてはもう少し余裕がありそうなので、クロックアップなどしてやればもう少し伸びる気がする。あと、メインメモリの書き込み速度が遅すぎるように思う。測定環境のセッティングで何かミスっている可能性がある。 それよりも問題は、3DMark2000を動かすと確実にFillRateのテストで落ちるということ。ForceWareの古いバージョンでなら動くのかもしれないが、GeForce6シリーズをサポートしたバージョンというとかなり最近の話になってしまうので、あまり期待できないかと。 |
11 GFX5700LE-P256C(玄人志向)→製品情報 |
いよいよ最後のビデオカードの登場である。nVidiaのGeForce
FX 5700LEを搭載しメモリも256MBを備えているという、PCIビデオカードとしては最高ランクのカードと言えるだろう。この製品が、後継のGFX5700V-256Cも含めて早々にディスコンになってしまったのは残念なところ。 GF6200A-LP128Hでとりあえずの動作確認はできているのであまり心配はしていなかったのだが、予想どおり起動及びドライバのインストールは問題なし。ただし、最新版のForceWareではGF6200A-LP128Hと同様にエラーを出して落ちてしまうという点も同様。幸い、ForceWare 56.72での正常な動作を確認できた。ドライバに付属のドキュメントを確認する限り、GeForce FX 5800が登場した時のドライバのようなので、ぎりぎりGeForce5シリーズの機能がサポートされている(公式にはGeForce5700は未サポート)ようだ。 それでは、HDBENCHのデータである。 ★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★このスコアぐらい出てくれると、無理して載せ替えようかという気になってくるかな?とは言っても、絶対的なスコアとしてはそれほど変わっていないというのが正直なところだが。 ちなみに、ゆめりあベンチは4286、3DMark2000は1877となっていて、ゆめりあベンチのスコアの上がり方がすごい。これは、GPUがDirectX9にネイティブ対応していることと、メモリ容量が256MBあることが大きな要因だろう。逆に、3DMark2000はあまり上がっていないが、DirectX7ベースのベンチマークであることと本体の処理能力が頭打ちでボトルネックになっているのであろう。 |
12 最終結論 結局のところ、GeForce系チップを使用しているビデオカードしか動作確認ができなかったので、その中での選択となってしまった。 このうちGF6200A-LP128Hは、GeForce6シリーズの新しい機能をサポートしている点で魅力的ではあるのだが、いかんせん3DMark2000で落ちるという現象が解消できない以上、採用するわけにはいかない。 となると、GeForce2MX400 対 GFX5700LE-P256Cの戦いとなるわけだが、コストを度外視すればそりゃもうGeForce FX 5700LEに軍配を上げざるを得ないだろう。というか、正常に動作が確認できたForceWareのバージョンでサポートされるビデオカードが、GeForce FX 5シリーズが最新だということに理由は尽きてしまうわけだが。 ということで、PC-9821Xv20に採用するビデオカードはGFX5700LE-P256Cに決定! |