はるか昔、まだPC-98シリーズの標準がVMだった時代は、ソフトウェアの動作はすべてCPUとしてV30を前提として考えられていた。しかし、80286の登場以降は徐々にそれが崩れ始め、i386の登場からはi386以降搭載が必須となるようなソフトウェアが増え始めた。 それでも、V30を基本としたソフトウェアはまだまだ多かったのだが、いかんせんV30/10MHzといった動作速度ではかなり遅く感じるようになっていた。 そんなV30マシンの救世主として登場したのが、(株)エム・エス・アイの「ハイスピードCPUボードM3」である。 これは、V30搭載のPC-9801シリーズの拡張スロットに、V33A搭載のCPUボードを刺すことによって、CPUをのっとりV33Aに演算を行わせるというものである。その性能は、メーカー曰く「80286、12MHzマシンにスピードアップ」というものであった。 実際、当時もかなり興味を惹かれたのだが、しかし問題は\68,000というその価格にあった。そんなもん高校生が簡単に買える代物じゃないぞ!ってことで、幻の一品として記憶の彼方に追いやられることになった。 しかし、21世紀になってからこのCPUボードを入手することに成功!当時のうたい文句が本当かどうかを検証してみることにした。 |
これがボードの様子だが、DIPスイッチとジャンパによって設定を行うようになっている。アクセスウエイトの設定はジャンパによって行うようになっているらしい。ちなみに、このボードを刺したままでも、背面のスイッチを切り替えれば本体側のV30を動作させることが可能である。 |
これが、ボードに載っているV33Aである。16MHz動作品が載っているが、実際の動作は本体側のシステムクロックによるので8
or 10MHzとなっている。パッケージはPLCC。 ボード上には数値演算コプロセッサは搭載されておらず、もちろん本体搭載の8087を使用することができないため、浮動小数点演算等を多用するプログラムには不向きである。 プログラムによっては、CPU情報やコプロセッサの情報を取得するものがあるが、このようなプログラムを実行した場合にはハングアップすることになる。そういった事態に対応するためのソフトが添付されており、実行するとシステム領域をフックしてV30搭載のようにふるまうようになっている。 さて、実際にどのくらい速度が向上するのかということで、ベンチマークソフトを動かしてみた。ベースになったマシンはPC-9801UV11で、V30/10MHzのマシンである。 (1)V30/10MHzの場合 80X86 CPU Speed TEST v0.980 Copyright 1992 ZOBplus Hayami(2)V33A/10MHzの場合 80X86 CPU Speed TEST v0.980 Copyright 1992 ZOBplus Hayamiドライストーンなので、ほぼCPU演算速度の向上を反映していると考えられるのだが、2倍までは速くなっていないようである。V33Aの場合でもCPU TypeがV30になっているのは、前述の対策プログラムを動かしているからである。 ちなみに、80286/12MHzの数値は以下のとおりである。 (3)80286/12MHzの場合 80X86 CPU Speed TEST v0.980 Copyright 1992 ZOBplus Hayami この数値を見る限り、メーカーサイドのいう「80286、12MHzマシンにスピードアップ」っていうのはちょっと誇大表現な気がする。とはいえ、体感速度は明らかに向上するので、有効といえば有効なんだけど。それにしてもこの価格はなぁ… |