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PC-VS26DS7DA2のクロックアップ



 別ページにて行ったCPU換装というのは、ある意味"載せ替えるだけ"というごく普通のパワーアップでよくある話しなのだが、このサイトでは当然このままで終わるわけがない。ここからFSBをクロックアップすることによって、より高速化していくのである。

 まずは、使用されているクロックジェネレータの解析から始めることにする。
 使用されているクロックジェネレータICは、CypressのCY2276である。ところが、CypressのWeb上にはこのデータシートがない。しょうがないので、同じタイプと思われるCY2275のデータシートから機能を類推することとした。ちなみに、CY2276は4DIMMをサポートした440LXチップセット用であり、CY2275は同じ440LX用の3DIMMバージョンである。クロック出力数が異なるためか、パッケージのピン数はCY2276の方が多い。
CY2276
CY2276とその周辺の様子

 まずは、ピン配置がわからないため周波数カウンタなどを利用してピン機能を特定していった。ICのそばにある部品群は、ダンピング抵抗かバイパスコンデンサがほとんど。

 ところで、SoftFSBのドキュメントなどでも記載されているが、このCY2276はソフトウェアによるFSB制御はできない。なぜなら、FSBは66MHz固定となっているからだ。したがって、クロックアップするためには別にクロックの供給源を設けて、いわゆる原発乗っ取り方式を使うしかないのである。
 CY2275のデータシートによると、CPU・PCI・メモリの各クロック以外には14.318MHzのシステムクロックを生成しているだけで、USBやサウンドなどのクロックは別のICで生成することになっている。しかし、基板上のCY2276の周辺を調べていくと、14.318MHzの他に48MHzも生成しているらしいことが判明した。実際、このクロックを切るとUSBが動作しなくなるため、CY2275とCY2276では生成クロックにも相違があるようだ。システムクロックの14.318MHzは2系統を出力し、1系統は3.3V、もう1系統は2.5Vのクロックを生成している。48MHzは3.3V系のようである。

 ここまで特定できれば、14.318MHzと48MHzは別途用意したクロックから供給し、もともとついている14.318MHzのクリスタルを交換することでCPU・メモリ・PCIのクロックを変更させることは難しくない。
 ただし、それぞれのクロックは電圧が2.5V、3.3Vと細かく設定されており、むやみに5V系のクロックをつっこむわけにもいかない。そこで、クロック生成回路と電圧変換回路を作成することとした。

回路図

 この回路図は、実際に今回の改造に際して作ったクロックジェネレータ及び電圧変換回路だが、実際のところ分周回路は必要ないため74AC109は不要である。出力は、48MHz/3.3V、14.318MHz/3.3V、14.318MHz/2.5Vがあれば十分なので、実質的に機能しているのは電圧変換部だけということになる。

 発振回路には、キンセキのJXO-5S(14.318MHz)、JXO-7S(48MHz)を使用し、電圧変換には74LCX04を使ってみた。
 LCXシリーズは、5Vトレラントインプットのため、こういった電圧変換の場面にはぴったりである。スペックを簡単に表にまとめてみた。

  電源電圧 動作速度 駆動能力 消費電流
74LVX04 2.0〜3.6V 6.6ns(tPHL) +-20mA(max) 2.0uA(Vcc=3.6V)
74LCX04 2.0〜3.6V 5.2ns(tPD) +-24mA 10uA
※両方とも5Vトレラントインプット

 メーカーにより多少スペックが異なるが、LVXでも特に問題は発生しないように思われる。が、今回は念のためLCXを使ってみた。値段もそんなに違うわけじゃないし。
 実際には5Vクロックを抵抗で分圧して注入しても問題は起きない可能性が高いのだが、回路を厳密に調査していない以上、もし最大定格入力が5V未満だった場合に取り返しがつかないことになりかねないので、できればしっかりと電圧整合をしておきたいものである。

クロックジェネレータ
クロック生成基板の様子

 今回はLCXを使用するため、ピン間隔が1.27mmピッチの基板が必要になるのに加え、ジャンパも多めにとばさなければいけないということで、1.27mmピッチスルーホールのユニバーサル基板を使ってみた(サンハヤトのICB-028)。
 DIP16PinのICソケットに1kΩの抵抗が2本付いているのは、試作段階の74AC109の名残である。不要になったAC109を取り外し、LCXのインプットにつながっている端子を5Vプルアップするために抵抗を取り付けている。こんなの無くても動きそうなものだが、高速(とは言えないか?)ロジック回路の安定性のためにはちゃんと処理しておかないとね。

 この基板を実際にどのようにジェネレータICの周辺につないでいるかというのが次の写真。

基板の接続

 もともと付いていた14.318MHzの水晶発振子を取り去り、そこに丸Pinソケットをはんだづけ。水晶発振子を取り替えることにより動作周波数を変更できるようにする。予定では、外付けのPLL発振回路を搭載してクロックの変更を行うようにするつもりだったのだが、CY2276が外部クロック入力を受け付けてくれなかったため、断念した。
 供給すべきそれぞれのクロックラインについては、マザーボード上のダンピング抵抗を取り外し、そのランドにワイヤーをはんだづけしている。5V/3.3V/2.5Vの各Vccについては、5Vは隣接するTTL ICのパスコンから、その他はCY2276の各端子につながっているパスコンから引き出している。

 実際の動作については特に問題が無く、すべてのクロックが同期している必要はないようである。動作可能上限周波数は、CPUよりもチップセット周りで決まってしまうようで、CPUの動作上限よりも前に、AGP及びPCIバスの方が先にダウンしてしまう。現在の使用状況は、CPUは877.2MHz(FSB76.28MHz)としており、PCIバスは38MHzで動作していることになる。わずか1.5割程度の高速化ではあるが、メモリアクセスやディスク転送速度等のすべての動作に影響するので、体感的にも有意義であろう。

 ちなみに、CPUのクロックアップに当たっては動作電圧の微調整が欠かせないが、このマシンのCPUの電源をコントロールしているICにはHIP6004CBが使用されており、1.8V未満の電圧も生成できるようになっている。同じマシン群でも一部では1.8V以上しか生成できないものもあるようなので、その場合にはマザーボードをいじって電圧をコントロールするなどなんらかの対応が必要になると思われる。

チップ配置図
チップの配置状況

 CPUの発熱についてだが、やはり定格動作に較べて温度上昇が顕著である。しかし、現状ではリテールパッケージに添付されていたCPUファンで対応できる範囲内に納まっている。VS26のマザーボードはCPUの温度を監視しており、CPU温度が40度を超えるまではファンの回転を抑えて低騒音化を図っているのだが、クロックアップにより監視温度を超えることが多くなったため、ファンの回転は高速になったままという状況が続くようになってしまった。ま、このあたりは許容範囲ってことで。



 この改造を施してからたぶん2年ぐらいが経過したのだが、その間にCPUはPPGA Celeron,FC-PGA Celeron,FC-PGA2 Celeron(Tualatin)とさまよってきて、結局のところ元のとおりFC-PGAに納まっている。この改造を当初に施した時と同じなんだけど。
 いろいろなCPUを載せ替えてきてわかったことは、Socket370-Slot1の変換ボードによってかなり動作状況が異なるということ。変換ボードを替えるだけで、動作クロックの上限にかなりの違いが出ることが確認できた。
 いろいろ使ってみて一番相性が良かったのが、IwillのSlocketII。これは、ネットで調べてみると結構評判が悪いようなのだが、Asus・AOpenなどのボードではCPUコア電圧を上げないとクロックアップ動作しなかったものが、Iwillのだと電圧を上げなくても動いたのだ。すなわち、コアの発熱をそれだけ抑えることができるため、安定動作の上限も当然上がるというわけ。
 残念ながら、ソケットのクリップ固定部が壊れたため廃棄処分としたが、今でもこいつが残っていたらもうちょっと上を狙えたと思っている。

 現時点で記録として残っている最高動作クロックは、約900MHz。そのときのWCPUIDの画面キャプチャがこれ。
WCPUID f=900MHz

 この状況でTualatin Celeronあたりを載せればもうちょっと上までいく可能性もあるが、FSB=78.5MHzで動いているためAGP/PCIともタイミング的にほぼギリギリであり、このあたりがいいところだと思う。確か、Celeron/1.2GHzで試したときはもうちょっと上までいったとは記憶しているが、それでもギガの壁は厚かったはず。直前で断念せざるを得なかった苦い思い出がある。

 で、現在の動作状況は以下のとおり。

WCPUID 現在の状況

 FSBを73MHzにまで下げてようやく安定している。実験機としてなら、75MHz程度を上限としてもいけそうだが、微妙にデータ転送が化けてる気配があり不安が残るので、ここまで下げている。CD-Rライティング中にデータ化けでもされたらたまらんからねぇ。

 ついでなので、HDBENCHの状況も載せておく。
★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★
M/B Name
Processor Celeron 844.53MHz[GenuineIntel family 6 model 8 step 6]
Cache L1_D:[16K] L1_I:[16K] L2:[128K]
VideoCard RADEON 9000 SERIES
Resolution 1024x768 (32Bit color)
Memory 195,672 KByte
OS Windows Me 4.90 (Build: 3000)
Date 2003/09/07 14:34

SCSI = Virtual CloneDrive
SCSI = Win9x-ME Promise Ultra100 TX2 (tm) IDE Controller
HDC = Intel 82371AB/EB PCI Bus Master IDE Controller
HDC = プライマリ IDE コントローラ (デュアル FIFO)
HDC[?]=セカンダリ IDE コントローラ (デュアル FIFO)

A = GENERIC NEC FLOPPY DISK
C = QUANTUM FIREBALLP LM Rev A35.
D = ELBY DVD-ROM Rev 1.0
E = SONY DVD-ROM DDU220E Rev 5.0g

ALL Integer Float MemoryR MemoryW MemoryRW DirectDraw
16599 33847 35570 9952 8228 13582 50

Rectangle Text Ellipse BitBlt Read Write RRead RWrite Drive
26927 25349 5394 165 24271 21852 7556 10660 C:\100MB


 ま、なんにしてもこのマシンをこれ以上高速化するのもどうかと思うので、とりあえずは一段落。


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