初期VALUESTAR
NXシリーズであるPC-VS26DS7DA2には、PentiumII/266MHzが搭載されている。しかし、今やそんなCPUは中古市場でなければ入手できないわけであり、エントリーレベルのデスクトップパソコンでさえ動作周波数が1GHzに達しようとしている。 そんななかでも初期VALUESTAR NXはまだまだ使えるということを示すために、TualatinコアのCeleronを載せてみた。 なお前提として、このマシンではCoppermineコアのCeleronが動作するような環境を整えているので、注意が必要である。ノーマルなPC-VS26DS7DA2に、TualatinコアのCeleronをいきなり載せても動かないっす。 |
PC-VS26DS7DA2は、上に書いたとおりPentiumIIを搭載したマシンのため、CPU取り付け部はSlot1と呼ばれるインターフェースを使用している。このSlotは、その後Celeronプロセッサ(Mendocinoコア)でも採用されたものの、コストや電源供給能力などの点からPGAソケット(PGA370)に主役を譲り、消滅することになった。 しかし、CPUの形状は変わっても電気的な特性はほぼ変化がないことから、Slot1→PGA変換ソケットを利用してPGAパッケージのCPUをSlot1マシンに載せることによって、マシンの高速化を図るということが行われてきたわけである。 これを実際にPC-VS26DS7DA2でやってみたのが「PC-VS26DS7DA2のCPU換装」であり、アイ・オー・データのアクセラレータ用BIOSを使用してCoppermineコアのCeleron搭載を実現していた。 当時は、CPUの動作倍率がFSB66MHzに対する11.5倍(CPUコア動作周波数766MHz)で止まっており、FSB100MHz版のCeleronでも10倍程度とこれ以上の高速化を図る手段がなかった。ところが、TualatinコアのCeleronでは1.2/1.3GHzといった動作周波数のものが出荷され、とうとう動作倍率がCoppermine版Celeronを上回ることになった。 しかも、2次キャッシュが256KBに増えているため以前のPentiumIIIと同等の性能を発揮してくれることが期待できるということもあるのだ。実際、一部のCPU判定ソフトでは見事にPentiumIIIと判断してくれるくらいだし(笑)。でも、LatencyはPentiumIIIより落としてあるとか…。 なお、Tualatin版Celeronのその他の特徴としては、コアが0.13umプロセスのものとなり、パッケージがIHSを採用したFC-PGA2となっている。しかし、ソケット自体は従前のPGA370が使用可能といったことがある。 そして、最大の問題はシステムバスの入出力が従来のAGTL+からAGTLに変更になっていることである。これにより、信号電圧が1.5Vから1.25Vに下がっており、データシートを見る限りでは1.5Vの信号のままでは最大定格を超える部分が出るためAGTL+のままでは動作させられない。 このあたりが、Tualatinコアに対応したマザーボードでないと動かないという理由になるのだが、当然のことながらVS26Dはそんなものには対応していないわけだ。そこで登場するのがCPUゲタと呼ばれるもので、今回はPowerLeapのPL-iP3/TというSlot1→PGA370(Tualatin対応)を使ってみた。というか、この製品以外にTualatinコア対応のゲタを知らないだけなんですが。 |
このゲタは、基本的な機能としては電圧変換ゲタのようだ。電源はマザーボードからではなく電源ユニットから直接供給を受け(専用ケーブル付属)、ゲタ上のレギュレータによってCPUの要求する電圧に変換している。この電圧変換部(VRM8.5対応)がゲタ上のかなりの部分を占めている。あとは、CPUの制御ピンやマザーボードの制御などのための回路が載っているようである。見た感じではそれほど複雑な制御をしている気配はない。 |
ところで、システムバスがAGTL+からAGTLに変更になったことに伴い「入出力が差動伝送方式(differential
mode)になったためにTualatinコアが使えない」というような表現をWeb上で見るのだが、データシートを見る限りではこれは正しくないと思われる。実のところ、AGTL+でもdifferentialで動いているので、バス駆動方法としては大きな変化はない。タイミング的にもFC-PGA版のAGTL+とはほとんど差がないようだ。ただし、電圧の変更に伴いVrefやVTTが変更になっているため、そのままでは使えないみたい。(同じPowerLeapからPL-370/Tから発売されたことから、たぶんこれで正しいみたい) differentialになって問題が出るのは、クロックの供給である。Tualatinではクロックの供給方法もdifferentialで行うようになっており、BCLKとBCLK#で逆相のクロックを送るように指示されている。ただし、これはsingle endでも動作させることが可能なようで、その場合には従来のFC-PGAと同じような仕様となっている。differential/single-endedの切り替えは、Y33pinを見てCPUが判別を行うようだ。 このあたり、システムバスの仕様変更とクロック供給の仕様変更がごっちゃになって解釈している人が結構いるみたいに思うのだが、逆に私が勘違いしているって線も捨てきれないので、誤りがあったら指摘して欲しいところである。 さて、上に書いたあんまり差がないってのはFC-PGA版のCeleronと比較しての話であって、S.E.P.P(Single Edge Processor Package)であるPentiumIIのバス仕様と比較するとやはり隔たりはある。それでも、Slot1→FC-PGAというゲタが存在して動作していたのだから、Slot1→FC-PGA2でも動作しないことはないだろうというのが動作すると思われるかすかな根拠だったりするのだけど。 |
今回は、TualatinコアのCPUとしてCeleron/1.3GHzを用意。でも、このゲタは公式にはCeleron/1.2GHzまでしか対応していないという…(2002.02.03現在)。本体は、CoppermineコアのCeleronを搭載するために使用した、アイ・オー・データ製CPUアクセラレータPK-P2A733NXに添付されていたN-PATによりBIOSアップデート済み(これ重要)である。当然、Tualatin対応のBIOSなぞ存在しないので、このままでやむを得ないところ。 ゲタにCPUを取り付け、リテールパッケージに含まれていたCPUクーラーも取り付ける。FSBが低いので発熱量はフル動作時よりも格段に低いはずなので、もうちょっと小型のものでも対応可能だとは思うのだが、FC-PGA2用のクーラーを持っていないことと、マザーボードの温度制御が行われているファン用電源を使用することから、リテールのものをそのまま使用している。 動作はあっけないほど問題なし。ただし、クロックアップ環境下だとタイミングのマージンがなくなるために、ディスクアクセスが不正となったり、HDDが見えなくなったりすることがある。これはクロックを下げることによって回避可能である。少なくとも、標準仕様のままであれば問題点は見つからなかった。 現行仕様としては、FSBを73.4MHzとし、CPU動作周波数が954MHzとなっている。クロックアップとしては1割程度なのだが、FSBを75MHzにすると上に書いたような障害が発生するので、この程度がギリギリだろうと判断している。 |
データシート見ていると、1.4GHzのスペックまで出ているので、しばらくしたらCeleron/1.4GHzが出ることは間違いないと思われる。コイツに載せ替えれば、晴れて1GHzオーバーを実現することができるはずだが、さすがにもうやらないと思う… |