これまで、CPUを載せ替えたり、はたまたクロックアップや、あるいはビデオカードを交換するなど、様々な強化策を施してきたPC-VS26DS7DA2だが、さすがに1998年2月発売という古さはいかんともし難いのは事実である。中古でも、このクラスになるとほとんど捨て値に近い評価となってしまうのは、現行のWindowsを動作させるにはパワー不足であるからに他ならない。 特に、CPUアクセラレータなどでCPUをCoppermineコアに強化しても、チップセットに440LXを搭載している関係でWindows2000が動かないのは、現用機として使うには致命傷に近いものがある。そして、チップセットを載せ替えることができない以上、これは宿命としか言いようがないものである。 さて、ここで一つの救いとなるのは、本機のマザーボードがNLX仕様になっているということである。NLXとは、intelが定めた規格の一つで、ライザーカードを採用することによってATX仕様に対して小型化を図れるなどの利点を謳っていたものである。規格上は、フルサイズのNLX仕様とミニサイズのものがあるようで、PC-VS26DS7DA2はフルサイズのものに該当すると思われる。そしてNLX仕様では、ライザーカードとの接続部が規格で定められていることから、基本機能については差し替えが可能であると想定されるのである。 以上のことについては以前から情報としては得ていたものの、NLX規格自体はあまり普及せず(省スペースマシンなどで一時期盛んに用いられたが)すでに絶滅しているため、交換用に用いることのできるNLXマザーを入手する機会が無かったのであった。 ところが、ひょんなことからそのNLXマザーを入手できたため、マザーボード交換の実験を行うことにした。 |
1 NLXマザーボードの素性 今回入手したのは、GIGABYTE製のGA-6ZOZ42(リンク先はGA-6ZOZ)である。ライザーカードも同時に入手したのだが、どうやらGIGABYTE製のベアボーンマシン向けに使われたもののようだ。仕様は440ZXチップ搭載のSlot1マザーとなっている。 ライザーカードとの接続はカードエッジコネクタとなっているのだが、確かに形状・ピン数ともに元々のマザーボードと同じように見える。ただし、基板全体は一回り小さくなっているので、こちらはミニサイズのNLX仕様(マイクロNLX?)であろう。 IDEインターフェースやFDDコネクタ、パワースイッチ・リセットスイッチやLED類の信号線は、すべてカードエッジコネクタ経由でライザーカード側に引き出されている。 2 仕様の確認 上記のリンク先には、550MHzまでのCPUに対応している旨の記載があるが、最新BIOSではCoppermineコアのCeleronにも対応しているとの情報もあった。ただし、基板のリビジョンが1.23以降のもの限定ということになっているのだが、このマザーは1.1とのシルク印刷があるので不安の残るところである。 とりあえず、問題なく動くであろうと思われるPentiumII/266MHzを載せて、マザーボードをセットしてみた。今回は、マザーボード以外はライザーカードも含めてすべてPC-VS26DS7DA2のものをそのまま使用している。 電源を入れてみると、あっさりと起動してBIOSが立ち上がってきた。オンボードのビデオカードも正常に生きているようだし、動作もおかしいところはないようである。 BIOSが出荷時のままのようだったので一段階ずつアップデートしていったのだが、やはり最新版にするところでIDが違うと怒られた。まぁ、無視して強行すればそのまま当てることができたので、とりあえず最新版にしてみた。 この状態で認識できたCPUは、CoppermineコアのPentiumIII/Celeronまで、動作電圧もBIOSでモニターする限りでは正常なので、とりあえずは当たりだったようだ。ただし、ゲタをかませたTualatin Celeron は、起動はするもののBIOSのCPU認識がうまくいかずハングアップしてしまう。ネット上で調べてみると、動作した旨の報告もあるようなので、基板のリビジョンが1.23以降のものであれば動くのかもしれない。 マザー以外の周辺部分の状態だが、電源周りは起動スイッチも含めて正常、USBポートも使えるようで、USB接続のレガシーデバイスを許可すれば、PC98-NX用キーボードのみでも使えそうである。サウンドは結線がされていないようで、前面スピーカーからは音が出ない。拡張スロットは、ライザーにある3つのスロットのうちNo.1とNo.2のみが使用可能である。これは、GA-6ZOZ42のライザーにPCIスロットが2つしかないことから、マザー側で割り込み線などが結線されていないものと思われる。これが3つ使えたら最強だったのになぁ。 |
3 ベンチマークデータ
とりあえず問題なく動くことが確認できたので、オリジナルのマザーボードの環境を直接移植してベンチマークデータを取ってみた。なお、440LX用に最適化した環境のため、GA-6ZOZ42には若干不利かもしれないことを付け加えておく。 動作環境は以下のとおりである。 CPU:PentiumIII/1GHz(Slot1、FSB133MHz、Vcore=1.7V、SECC2パッケージ) MEM:256MB SDRAM(PC133、CL=2) HDD:HITACHI HDS728080PLA380(S-ATAII、80GB) GPU:玄人志向GFX5700LE-P256C(GeForce FX 5700LE) ★ ★ ★ HDBENCH Ver 3.40 beta 6 (C)EP82改/かず ★ ★ ★これだけ見ても、オリジナルとどう違うのかわからないと思うので、オリジナルと比較できる環境で計測してみようと思う。 ただし、オリジナルといってもクロックアップしてCPUはTualatinコアのCeleronを載せているので、ノーマルなPC-VS26DS7DA2ではないので注意を。CPUはちょうど同じような動作クロックとなっているが、FSBが約73MHzでCPUは14倍速動作、ビデオカードはGeForceのままでは計測できないため、RADEON9250に変更している(玄人志向 RD925-LP64Dを使用)。 ※GIGABYTE GA-6ZOZ42ビデオカードを同じにしてみると、マザーボードそのものでは意外に差がないということがわかる。さすがに、メモリはFSB133MHzで動かしているのでかなりの差異が出ているが、それ以外はCPUクロックもほぼ同じなので似たり寄ったりな値である。 ちなみに、3DMark2001SEでの値は、GA-6ZOZ42は4836、オリジナルは3378となっており、メモリアクセス速度が結構効いていることがわかる。 |
4 総評 ベンチマークデータを見てわかるとおり、無改造のPC-VS26DS7DA2からのアップグレードであれば、CPU・メモリ速度とも改善されるため、かなりの効果があると思われる。ただし、すでにCPUアクセラレータ等で高速化を図っている場合には、効いてくる差がメモリアクセス速度しかないため、その効果は薄くなってしまう。 もちろん、440LXチップセットの制限から解放されるためWindows2000が使えたり、SSE機能等の制限無くGeForce系のビデオカードが使えたりと、それなりのメリットがあるのだが、そんなところに金を使うくらいなら安いCeleronDマシンでも買った方がよっぽどコストパフォーマンスが高いことは言うまでもない。 今回の実験は、マザーボード交換の有効性を検証するという目的で行ったものなので、結果としては満足できるものとなっている。ただし、マザーボードを交換するかといえば、今回はそのままオリジナルのものを使うことにした。 性能的には、GeForce FX 5700LEにしてやればかなり上がるし、また安定性も上がるしWindows2000も使えるというのは大きなメリットなのだが、PCIスロットが2本しか使えないというのが今回交換しない最大の理由である。 PCIスロットの1つには有無をいわさずビデオカードが居座るわけで、そうするとあと1本しかスロットが空かないことになる。ここにUSB2.0、IEEE1394、ATAインターフェース、ギガビットイーサネットの4機能を放り込むのは、どう考えても無理。となると、性能としては上がっても機能としてはグレードダウンとなるため、現時点では許容できないのである。今回の一連のシステムは、予備資材として保管しておくこととしたい。 |