2011.05.08 さてさて、久しぶりに行われたPCIビデオカードベンチマーク大会だが、今回はおまけとして今後のPCIビデオカードの方向性について考えてみたいと思う。 というのも、ここ最近はPCIビデオカードの新作が発表されることもめっきりと減り、玄人志向の現行ラインナップにおいてはGeForce8400GS搭載のGF8400GS-LP512H/HS/D3しか残っていないという状況である。実際のところは、アキバの店頭や通販でHISのH545H512Pもまだまだ購入可能であり、GeForce FX 5xxx世代のビデオカードも生き残っているが、最新あるいはそれに近い世代のGPUを積んだモデルの選択枝はほとんど存在しない。 そんな状況下において、一筋の光明が差し込んだ。それは、玄人志向の「PCIEX1-PCI 」である。 マザーボードのPCIスロットにPCI Expressx1カードを刺せるようにするというこの変換カード。これって、要するに最近のPCIビデオカードに載っているPCI Express to PCIの変換部分が用意できるわけで、普通のPCI ExpressビデオカードがPCIスロットで使えるようになるかもしれないのだ。 しかし見てもらってもわかるとおり、あくまでもPCI Express x1を対象としているため、広く出回っているPCI Express x16のビデオカードはそのままでは使えない。 となれば、もちろんコネクタ加工でx16カードも使えるようにするしかない。 これで、PCI Express x16ビデオカードをPCIビデオカードとして使うことができるようになった!もちろん信号線はx1しかつながっていないのだが、PCIバスでボトルネックになるのだからほぼ問題なかろう(笑) ちなみに、ブリッジチップはPERICOM PI7C9X111となっている。 さて、この変換ボードには外部電源供給コネクタ等はない。もちろん、PCI Express x1分の電源線しかないので、PCIスロットから供給される電力で賄えてしまうということなのだろう。載せるPCI Express x16カードも低消費電力のものでないとならないわけで、どうしてもローエンドの製品となってしまう。 そこで今回は、MSIのGeForce GT 430搭載ビデオカードN430GT TwinFrozr Mini 1Gを採用した。そもそもなぜにRADEON系ではなくGeForce系を選んだのかということだが、それはGeForce系でDirectX11対応のPCIビデオカードが登場していなかったからである。RADEON系ではDirectX11対応のPCIビデオカードが登場することによってその有効性が示されているのだが、GeForce系ではそれができていないことから、将来的にそのようなビデオカードが登場したときの効果を推測できるかもしれないと考えたのである。 あとグレードの選択根拠なのだが、GeForce9500GT搭載リファレンスボードの最大消費電力が50Wとなっておりそこまでは製品化の実績があるわけなので、同等の消費電力を上限として探したところ、GeForce GT 430を選択することになったわけである。今なら、GeForce GT 520が有力候補となるだろうが。 ということで、N430GT TwinFrozr Mini 1G+PCIEX1-PCIという異形PCIビデオカードの誕生である!こういうの久しぶりだなぁ(笑) 本機で実装するならロープロファイル仕様に変更するのだが、今回はあくまでも実験ということでそのまま装着している。 さておまけ編では、さらにPCI Expressビデオカード交えて分析を行ってみたい。ハード/ソフトの環境は本編と同様である。 1 SP95GTG1024D2L-HP(SPARKLE、GeForce9500GT) 2 H435H512PP(HIS、RADEON HD 4350) 3 H545H512P(HIS、RADEON HD 5450) 4 N430GT TwinFrozr Mini 1G-PCI(MSI、GeForce GT 430)※名称は仮称 5 GV-NX84S512HP(GIGABYTE、GeForce8400GS、PCI-E) 6 N430GT TwinFrozr Mini 1G(MSI、GeForce GT 430、PCI-E) エントリーするビデオカードは上記の6種類。果たしてPCIビデオカードの存在意義はあるのか?またPCIビデオカードの性能はまだ伸びるのか?いろいろと面白い考察ができそうである。 |
それでは、Windowsエクスペリエンスインデックス。 まず注目すべき点は、N430GT TwinFrozr Mini 1G-PCIのゲーム用グラフィックスの値だろう。x16接続と較べて落ち込み具合がグラフィックス値よりも大きく、RADEON系よりも悪くなっている点である。 バスがボトルネックになっているのであればRADEON系と同様の値と横並びに近い数字になると思うのだが、それ以外の要因が絡んでいそうである。これがドライバによるものなのか、アーキテクチャによるものなのか、はたまたPCIEX1-PCIによるもなのか、検証のためにはサンプルを増やさないとなんとも言えないかなぁ。 それでも、グラフィックス値で5.9という値を出せていることは、PCIビデオカードでもまだまだ上を目指せるという証左であろう。 |
次にHDBENCH。 これがまた、PCI Express接続のくせにGV-NX84S512HPの低さときたら、なんともまぁ… あと、PCI接続とPCI Express接続で、Rectangleの値はそんなに変化がないというのも発見かも。 続いてゆめりあベンチ。 これは、本編と同じようにGeForce勢が優位という結果に。しかも、PCI接続でもPCI Express接続でもあまり変わらないという。これは、ベンチマークに使用するデータがビデオメモリに格納されてしまいバスに流れるデータが少ないためと考えられる。 次はタイムリープぶーとベンチの結果。 やはり最新世代に近いほどスコアが高いわけだが、PCI接続だからといって低いとは言えないところが興味深い。PCI接続ビデオカードも、最新世代のものを使ったほうが良いと言えそうだ。 続いては、FINAL FANTASY XIV Benchmark。 ここではPCI Express接続のGV-NX84S512HPが一番低いという結果に。傾向としてはHDBENCHに似ているか。そして、接続方法による差はないように見えるなぁ。 |
そして、3DMark06。 ここでは明らかな差が出た。PCI Express接続のN430GT TwinFrozr Mini 1Gが断トツのスコアを出している。この程度重いベンチマークになってくると、バス転送速度がかなり効いてくるのだろう。 そして、バッファロー ストリームテスト for 地デジ。今回は、特徴がわかる高画質と低画質を掲載する。 ※高画質(HP) やはりこのベンチマークは他のものとはひと味違うねぇ。GPUの能力差よりもバス接続方法の違いが如実に表れている。それだけデータ転送量が半端ないということなんだろうけど。 そしてもう一つ注目すべき点は、N430GT TwinFrozr Mini 1G-PCIがPCI接続なのに100%描画しきっていながらCPUにわずかな余力が生じている点である。常用するには難しいだろうが、PCI接続でもここをクリアできる可能性を見せてくれたという点で興味深い。 ※低画質(LP) ここも、バス接続方法の違いで大きく2つに分かれている。こうやって見ると、本編での分析とはまた別の見方ができそうで、PCI接続の場合にはCPU負荷は52〜55%で一定となってしまい、バス転送能力がボトルネックになっているようだ。やはり、動画系のような大量のデータ転送を必要とする用途には、GPUの性能がそんなに高くなくてもPCI Express接続のビデオカードを使用すべきだろう。 WebVizBenchとKrakenの値は次の通り。 正直、SP95GTG1024D2L-HPの低調っぷりが謎。一応これでもアクセラレーションは効いているのだが…(アクセラレーションを切ると、WebVizBenchは概ね4fpsとなる) そして結果の見方は微妙だが、多少の差はあるがバス接続方法の違いは決定的な性能差にはならないと判断できるので、最新のPCIビデオカードを使うことでIE9の動作を軽くすることができるだろう。 ということで、PCIビデオカードとPCI Expressビデオカードを取り混ぜてベンチマークデータを採取してみたわけだが、今回の実験で以下のとおり結論づけることができるだろう。 1 PCIビデオカードの性能向上はまだ可能である。 2 動画表示など大量のデータ転送を必要とする場合にはPCIバスがボトルネックとなりGPUの能力では改善できない限界がある。 3 WebブラウザのGPUアクセラレーションなどはPCIバス接続であっても効果がある。 これを踏まえて今後の希望を述べるとすれば、メーカーにはGeForce GT 520やRadeon HD 6450を搭載したPCIビデオカードを製品化してほしいということである。このあたりを参考に判断する限り、より性能が向上したPCIビデオカードを作れるような気がするのだけど。 |